009-009

エスゾピクロンの散歩

眠り

どうしてか眠りに落ちる寸前に、言葉による見返りを求めたくなる。

悲しんでる人、困っている人、怒っている人。みんな平等に優しくしてあげる。

人はわりと当たり前のように受け取る。差し出された手が自分のものだと疑わない。自分は、手を差し伸べられて当然。そんなふうに思ったりするのだろうか。

無限ではない優しさを振りまいてニコニコしている。私はどちらかというと普通の意地悪な女だと思う。それでも、自分の中に複数の選択肢がある場合は、その中でもっとも道徳的な言動を選ぶようにしている。『人格者たれ、人格者たれ』心で唱えて人格者たる。いつでも本心を置き去りにしている。私の本心よりも、人格者たることが大切だから。だけどこの葛藤をいつか誰かが見抜く日がくるだろうか。きっとない。

それでも今日も嫌々ながら正しいと信じる私を演って、あなたに恩を売った。

だったらあなたも、思ってなくとも構わないから、せめて一日が終わる夜に「あなたがいてくれてよかった」と伝えてくれたなら。この優しさは、この正しさはただ浪費されたのではなかったのだと、自分に言い聞かすことができるのに。私がいてよかった?いてもいなくてもよかった?全部私の妄想で、思い上がりで、自己満足に過ぎなかった?そうでないなら教えてほしい。今日が終わる前に。