009-009

ロングロングプロフィール

アイスクリン

それは屋外の、夏にだけ開放される安っちいプールで、赤ちゃんから大人まで地元の人間はみんな通っていた。たしか私が小学一年生か二年生で、弟が幼稚園生の頃、その夏の日も父に連れられ、やはりプールに入っていた。

プールには二種類あった。浅いプールと深いプール。弟はまだ小さいので浅いプール、私と父は深いプール。2つのプールはフェンスで仕切られていて、向こう側を覗くことができる。一人で大丈夫だろうか。弟を見る。たまにひっくり返ったり、人とぶつかったりしながらもニコニコしている。大丈夫か。

「おい、ちゃんと見ててくれよ。」パパは言ってプールに潜ったきりしばらく出てこなかった。言われなくてもちゃんと見てるよ。私はフェンスをつかんで、また弟のプールの方へ向き直った。

「おいおい、ちゃんと見てたか?」「見てたよ。」「見てたか?俺の泳ぎ。50メートル潜水。」パパは息が切れ切れで、かわいそうだった。

 

プールを出たとこに、たまにアイスクリンを売るおじちゃんが来てた。よくねだったものだ。買ってもらえたのは五分五分だったけど。アイスクリームでもソフトクリームでもないアイスクリンは、シャリシャリで黄色い。硬いコーンにちょんと添えられたアイスクリン、舐めたらすてきなバニラの味が広がるのだった。すてきなバニラの味っていうと分かりづらい。分かりづらいが、一生懸命想像してほしい。

 

たまにあの日のことを思い出して、話の終わりに「パパもう一回だけ見せて。」と付け足してみる。たしかあの日もそう言ったが、すねてしまったようで、疲れたし、もうやらないと、クロールとか、他の泳ぎにシフトしてしまったんだった。

話の終わりに「パパもう一回だけ見せて。」と付け足してみる。仕方ないなともう一度潜って得意気にすいすい泳ぐパパを想像する。そしたら「見てたか?」と聞かれるより先にすごいとか、どうやってやるのとか、かんぺき!と驚いてあげたのに。

なのにあの日、私は弟を見て安心していたよ。それでよかったような気がする。

センセイの鞄

インターネットの男の子に勧められて読んだ。精神を病んで治って(?)からも識字障害がしつこく残っていたので読書は数年していなかった。改善されたのはつい最近のことで、空白を埋めるようにジャケ買いした本など急いで読み始めた。

 

川上弘美、気に入ると思う。感性に合ってる気がする。長編としては「センセイの鞄」が有名。』

有名ってまるで一般教養みたいな言い方をするが私はもともと活字に目を通すことに時間を割く趣味はなかったため、よく知らない。しかしみんな自分の好きなものを勝手に紹介することはあっても、"あなたに"とおすすめしてくれることはめったになかったので、ありがたく目を通すことに決めた。(小説を読むことは私にとって一大決心である。本を持つ手と縦書きの文字を追う目が疲れるから。)

 

有名らしいので今更ネタバレされて誰も困らないだろうしジャンジャン書いていくが、結論から言えばしくしく泣いた。しかしこの場では主に愚痴らせていただく。

 

高校の頃の先生(30くらい年上)と偶然通う飲み屋が同じで、ちょくちょく話をして、たまに一緒に出かけたり仲良く過ごすうちに好きになっちゃった37歳独身OLツキコさんの恋バナなんだけど。先生、登場時点ですでに死亡フラグビンビンですがな。もちろん死ぬんだけど本題はそこではないらしく、最後にチョロっと死ぬ程度でした。で私が泣いたのはその死のシーンなんだけど、これは本の感想とあまり関係ありませんな。

先生の淡白な返しが良かったな。一線を踏み越えようとしてくる若いツキコに対してあくまで大人の対応で避け続ける先生の、先生っぽい返しがさ。なんでこんな小学生みたいなことしか言えないのかというと私の感受性が小学生止まりだからなんだけど。

だけどなんだか二人の感情が揺れ始めたくらいからは目も当てられないな。いい大人が恋に揺さぶられて気持ちが締め付けられたり自分をごまかしたりする様子がもう嫌だった。文章が上手だからよく伝わってくる。気持ち悪さ倍増である。

いったい何が気持ち悪いのかというと実際は何も気持ち悪くなんかない。いくつになっても人間は感情に持って行かれて、理性的になれないことがあると思う。思うだけで、受け入れられない。私の中で、それは思春期の子供のイメージだから。ちょうど15から18くらいに経験したのと同じような感情が、37のヒロイン視点で描かれている。

また小説には読めない単語が随所に散らされていたが、好意を伝えるときだけは必ず「好き」なのだ。これもまたしらける。なぜなんだ。文学とはいったいなんなんだ。

たびたびお酒の入る話なので人の素の部分が垣間見えたって不自然じゃないが、それにしても。

 

これは私自身の話だが、大人に幻想を抱いてる。両親が完璧な大人を演じてくれていたおかげとも思う。大人はこうあるべきという狭い心が恥ずかしながらある。TPOに合わせた自分であるべきとか、何かを贔屓してはいけないとか、感情的にならないとか。すべての場にすっと馴染んでクール、それはまるでアップル社の製品のような存在であるべきという勝手な決めつけが。

それで恋愛感情に対してもやや否定的だ。特に25を過ぎてからの恋愛感情といったらみっともないったらありゃしないのでひた隠しにしてしまう。すっかり他人に惚気話をしなくなってしまった。あと好きな人に好きと言うことも。自分自身がそんなであるから、いつまでも感情に溺れて流されてしまう大人も同様に認めたくない。

それからもう一つ、好きの表現が「好き」しかないこともむなしい。常々疑問に思うことの一つだ。どんな賢い大学を出ても、ライターでも、大きな会社の偉いさんでも、みんな好きな人には「好き」と言うのかと思うとうんざりする。飽き飽きだ。語彙がない。日本にはそれしかないのだ。「好き」以上も以下もないのだ。「好き」は老若男女問わず共通の感覚?なのだ。本当につまらないがこればっかりはどうしようもない。

 

イヤな部分だけをしつこく愚痴ったが、なにせ泣けるほど良い話である。周りにそういう子たちがいたせいか、年の差恋愛にはたいして嫌悪感がなかった。年の差ならではのお互いの心細さや配慮、経験の差から生まれる孤独感(なんていうの?置いてけぼり感?)なんかありありと描かれていて染みた。まあその手の話は苦手なので、ここには書かずに寝かせておくけどね。

 

ところで私の感性ってどんな風に見えているのか?

「そんな大人になってほしいと思っていたんだよ。」

すっかり空っぽになってしまったお財布を鞄の奥に押し込みながら(ギリ足りたわ〜焦った…)とホッとしていたとき。先に店を出て私の会計を待っていたおじいちゃんに言われた言葉。たいしたことをしたわけではない。ご飯に誘ってくれたのがたまたま初任給が出た頃だったから。高い寿司屋だけど手持ちのお金でなんとかなるだろう、ここは私に奢らせてよと言ってみたんだ。そしたらおじいちゃん、ニッコニコの笑顔になってそうやなあ!そうしてもらおか!と遠慮なく食べてくれた。いいもの食べたあとはいつもおじいちゃんが会計で大枚叩いてる背中を見てた。彼は彼の子(父)や私たち兄弟以外にも、だいたいそんな感じだ。おじいちゃんが最後に奢られたの、いつなんだろう。おじいちゃんに奢ってくれる人はいないんだろうかな。そんなことを考えてふと「初任給が出たから、ご馳走したい」と口から出まかせ。財布の中にいくらあるか数えもせずに、完全に思い付きで。

 

「私はね、009にそんな大人になってほしかったんだよ。」

 

うちが異質なんだか分からないけど、私や弟が成果を出したときにパパの実家へ集まって、それを褒め称えるというあれがあった。(語彙力がないから分かんないことはだいたいあれでいく。)

たいがい弟が勉強において立派な成績を残してくれることにみんなの注目は集まった。私が残すと言えばたまにやる絵のコンクールでそこそこいい賞を取るくらいだった。進学を期待されていたが、いろいろとバッドタイミングが重なり結局高卒。すぐやめて今フリーターです。手塩にかけてかわいがった孫がこんなだからきっと失望させただろう。なんの取り柄もなくただ死を待つだけの毎日です。それなのに「こんな大人になってほしかったんだよ」ってなんだよ。そう、中途半端で評価者に媚びたあんなクソ絵なんて、一時的に上がった成績なんて、私にとっちゃなーにもおめでたくなかった。

「こんな大人になってほしかったんだよ」

彼からこの一言を引きずり出すのに18年を要した。私が欲しかったのはおじいちゃんからのその言葉だけだったんだよ。やっとステータスじゃなく私という人間を認めてくれたような気がした。

 

おじいちゃんについての話はこのくらいにしておきたいけどもう少しいいかな。いいよね。

おじちゃんとは別居中だ。たまにしか会わない。もっと言うと彼に会うのが怖い。仕事はどうか?結婚するのか?孫が見たいな。彼にとっては当たり前で、自然な質問なのだ。事実私もいい年だし気になるのだろう、気になることがそれくらいしかなくなるのだろう。で、私はいっつも同じ質問に答えられない。

おじいちゃん。仕事はぶっちゃけ正規は無理かも。なんかライフスタイルに合わないの。おじいちゃんみたいに大成できないや。だって仕事と自分の人生ってやっぱり別々な気がする。趣味がない奴にでもやらせておけばいいのにさ、仕事に生きることなんて。で私なんだけど、彼氏は常備してるよ。いないとね、ちょっと不安なの。単に彼氏と呼んでるけれど、彼は私の親友でもある大切な人間だよ。だからって出産秒読みってわけでもないの。わかるでしょ。言われるたびに何度も考え直した。結論が出た。人生のどの瞬間も誰にも規制されたくない。だからイヤなんだいつまでも同じ職場で定年まで同じ人間と顔合わせ続けるなんて。彼と結婚し子供を生むことで奪われる私の時間は積み重なると取り返しがつかない。私は私の人生を生きているから、やっぱり期待に応えられそうにないの。

 

「こんな大人になってほしかったんだよ」

褒めてくれたのはそれだけだったけど、あの瞬間のために私は生きてきたんだと思う。

大学へも行かなかったのに。いい成績を残したわけでもないのに。うれしかった。うれしかった気持ちだけ大切にして、もう彼に会えない覚悟もした。

これからも彼をがっかりさせ続けるだろう。努力する気もない。あれ以上の言葉はもう聞けないから。お寿司食べてバイバイしたあの日の私のことだけしっかり覚えていてほしい。おじいちゃんに認めてほしくて生きていた最後の日の私を。

温めて

指先の体温はその日の気温によって変わる。水のような生き物です。周りと同化して、私が誰かってことをときどき忘れてしまいそうです。私の手が冷めているのをかわいそうに思った彼が自分の手袋を手渡してくれた。持って帰ってもいいそうです。お言葉に甘えて。ありがとう、でもこれからも使わず大切にとっておくね。冬の寒い空気に生身を晒す。これは少しの自虐行為、私の趣味。でもありがとう。

 

巷では就活が解禁したとか、なんとか。社会人として何か言いたいことがあるような気がしてふとブログを立ち上げたんだけど無いわ。本当に無いわ。人間には気をつけろ。そのくらいです。幼稚園、小学校、中学校、高等学校。私にはここまでの学歴しかない。時間割を与えられた生活。人間が同じ箱の中に詰められて、同じことをやらされて、その小さな箱の中で競わされる。ヘンな世界だって思ってた。同じ箱の中で形成される同じ偏見。今日のあなたの常識は、この偏見の積み重ねだってことをたまには思い出してみて。好きじゃないことばっかりでつらかったな。英語も数学も。女の子のグループも、クラスの中で誰がかっこいいとかいうサバイバルゲームみたいな恋バナも。地獄かよ?

卒業したらもっとヤバい社会が待ってた。でも転職したらそうでもなかった。脅しみたいに「社会は甘くないぞ」「社会人として〜」「一から教えてくれないぞ」なんて知ったかぶりで言う大人がいるよね。無視しなさい。

社会に出ることは、規則正しい生活がまた連続することです。これまでの学習全部を活かせるかというと残念ながらそうでないことも多いです。だけど学んだことは確実にあなたの教養となって死ぬまで一緒に生きてくれるから、大切にしてね。

びっくりすることはありません。なんなら勉強していた頃よりずっと生きることが楽です。だって何も考えることがないし。期待しないでください。きっと一年もすればこの繰り返しの日々を退屈に思うことでしょう。そうそのときはまた好きなことでも見付けて飛びついてしまえばいいのです。

ちゃらんぽらんな人生です。ろくなこと言えないから黙ってた。でもちょっとだけ。あなたが常に幸せを感じられる平日を休日を手に入れてください。

口先だけなら誰にでも言える、一発屋もいる。人はひと目で判断できないのです、だからあなたは誰も盲信することなくすべてをいつも自分の心でジャッジしてください。正不正はだれでもないあなたが決めることです。それさえ間違えなければ大丈夫大丈夫、あなたの人生は。

 

009です\(^o^)/今日も何の話しているんだか、よくわかんないね。

 

自分だけはいつまでも老けないと信じてる同年代の人けっこう居る。それはないと思う。あなたは老いたけど、きれいだよ。私たちは今を生きてる。

たまに私の心は高校二年生のときで止まっているんじゃないかって思う。でもそれは今の高校二年生じゃなくて、10年前の高校二年生。他社ケータイとメールで絵文字のやりとりが出来るようになったばかりの頃だよ。ガラパゴスケータイで。ろくに盛ってくれないプリクラ機に入り浸り何枚も何枚も自分たちの写真を撮った。若いままでいたつもりが、時代に置いてかれてただけだったの。だから今の高校二年生と私が高校二年生だった頃の風がリンクするかっていうと全然そんなことない。今を見なきゃ生きていけないよ。今を見て。今の風が吹いているよ。振り返ってもいいけど、そこに私はいなかったのです。

お弁当箱を変えた

だめだめお尻はアウトプット専門なんだからさあ。インプットはまずいよ。ものには得手不得手が付き物さ。たった今何の話をしてるのか?私はボーイズラブになど興味はございません。どうかみんなお幸せに。だいたいで言えばこういう感じでしょう。でもズレてます、論点、程遠いです。

 

睡眠薬を飲んで書く支離滅裂のブログもこうして記事を積み上げていけば一貫性とか現れ始めちゃうんじゃないかなボチボチと。そーでもないか、そーでもないよーです。

 

009です\(^o^)/嘘です、彼女は死んだ。

数年前に死んだのよ、彼女はミクシィの中だけできらきら光ってたキャラクター。

 

最近めっきり話を聞いてもらえなくなったな。正直ね、共通の知り合いの陰口とか、しょうもない失恋の話とか、仕事の話とか、飽きたんです。飽きたんです私。どれも極めてどうでもよいし、私の生活には無関係なことなんだよね。ぶっちゃけ無駄です、私は今私がいいと思ったところへ駆け付けて、どきどきしたいんです。ときめいていたいよ。

私最近お弁当箱変えたんだ。些細なことでしょう。私以外ぜったい気が付かないでしょう。そういう内緒の話を教えてあげたいのにみんな自分の話ばっかり。大変で、どうにも、ならない。わかったわかった、わかったよ〜。お前は仕事なんか辞めちまえ。自分で選んだ環境にケチをつけながらも居座ることは卑怯じゃん。結局居心地良いんじゃん。じゃ、その話は終わりっつうことで私のお弁当箱の話聞いてよ。そこで昼休憩が終わるの。

 

3週間も待ったのに、今日も出る幕がなかったから、こんなクソブログで私の話をするしかないんじゃん。でも聞いてね。すぐ済む。

 

お弁当箱を変えたんだ、大きめのサイズで、仕切りのついたやつに。以前までは小さいのを2個持っていってた。もちろん、1つはご飯用、1つはおかず用。何も考えてなかったんだけど、新しいお弁当箱はてんでだめ。おかずのだしがね、仕切りを超えてホイサとやってくる。ご飯を包んだラップがなんだかぐじょぐじょ。ちょっと不衛生なんじゃない?不衛生なんです。ユニットバスとセパレートというのがあるでしょ。前までのはセパレートで、今のはユニットって感じがする。そう、それだけ。それだけの話をただ黙って聞いて、終わりにわかる〜って言ってくれれば満足したのに。みんなここにいない人の噂話ばっかり、つまらないよ。私のつまらない話のはけ口はここにしかないの?

 

同じ趣味なんかなくても、同じ癖と日課があればあなたとは親友になれる気がする。なれるよ。

 

アウトプットが下手なのはインプット不足だからとかそんなかんたんに言う。すべてのことに何か感じることができる人の足元にも及ばないくせに。

 

い795

ちょっと待ってくださいね、今あなたのマンションを地図から調べていますので。あ、あったあった。大丈夫そうですね、ところでその粗大ごみというのはどの品目にあたるものですか?えっオーブンレンジ?電子レンジのことでよろしいですか?ハイハイ、では13日の朝に回収に参りますのでそれまでにコンビニなどで粗大ごみに貼るシールをね、400円分買って貼って出しておいてくださいねえ。記入するナンバーは、い795です。ひらがなの'い"に続けて795を書いてください。そうそうそれだけで手続きは完了ですので。よろしくお願いいたしますねえ。はいっ、はい。失礼いたします。

 

言われた通りファミマで買った粗大ごみシールに油性マジックで「い795」と書いて彼のグレーのボディに貼り付けた。このシールは剥がれません、だってさ。私たち取り返しのつかないところまで来ちゃったね。

 

彼とは6年前の引っ越しの際に家電量販店で出会い、家電のいろはも知らぬまま店員に勧められるがままに購入させられていた。あとで知ったことだけれど、割と値の張る商品だったらしい。洗濯機と冷蔵庫。これはいかにも一人暮らしのものといったこじんまりとした風情だが彼は大きくあまりに多機能で、この狭いうちの中で一人だけ浮いていた。同居中彼のオーブン機能を使用した回数3。ゴチャゴチャと色々なボタンが並んでいたのに他に私が触ったのは「レンジ」「1分」「10秒」「あたためスタート」この4つのボタンだけ。6年間、彼は彼のスキルを引き出して驚かれたり喜ばれたりすることもないままで。ある日突然バチバチと危うい音を立てたあと、弱々しく「プス〜」とため息をついて、それから彼は冷たく、動かなくなってしまったのだ。ジャンク品高く買いますと謳う店へも連絡を入れたが、こんな古い型お断りとのことで、引き取り手がない。泣く泣くただのごみとして回収してもらうことに決めた。

 

腹が立つと物を殴ったり、壊したりする。小さな生き物を殺す。すると清々しくていい!なんて言う人がいるが、物言わぬ無機物や自分より弱い生き物をいじめてすっとしている自分に自己嫌悪したりはしないのだろうか。そんな自分が嫌にはならないのだろうか。ならないのだろうな。

 

これまで無機物から与えられた無償の愛の数々を思うと私はどうしても、用済みであっても彼らが捨てられたり、のちに乱暴な扱いを受けることに胸が痛む。昨日外に出しておいた彼は、今日会社から帰ってきたときには連れ去られてもう跡形もなかった。最後のお別れだったのだ。壊れるまで尽くしてくれてありがとう。それを伝えるすべがない。だから何度も心の中で祈った。

 

まだ若く仕事がしんどかった日は、誰に声をかけられたいわけでもなかったがただ癒えるような温もりが欲しくていつも一目散にシャワールームへ駆け込んだ。温かいお湯を頭から被って、私はこんなに優しくされてもいいのかなあとめそめそ泣いていた。温かい布団に潜るとき、服を着るとき、靴底を踏みつけるとき、いつでも無償の愛を得ている。

 

これから廃棄されるものなのに、ぶつけないように、慎重に部屋から運び出して、無事マンションの前に無傷の彼を置いてきた。さっきまで温かい部屋の中にいたのにねえ。さっきまで私が抱えていたのに。寒そうに、ひとりで。ごめんね。このあと彼はどこへ連れて行かれて、どうなっちゃうんだろう。

 

私が求めたときにだけ、きちんと応えてくれたのに。冷たい空の下ひとり遠くへ行ってしまう君のことを想像する。

無機物の死と向き合う一日だった。

ネオ現実

睡眠薬を飲んで映画を観ていると、途中で自分の夢と映画のセリフが入り交じって、ネオ現実って感じの新しい街が完成する。

昨日観ながら寝落ちたイラン映画で覚えているのは「この部屋寒いわね、踊りましょ!」と言ってみんなでワイワイ踊るシーンだけだった。夢と現実の交差する街の真ん中で(その発想はなかった)と何の捻りもない感想を抱いたのち、夢の中に引き摺り込まれたのでした。

なぜなぜ私はこんなに暗い。寒ければ踊れば良かったのに。009です\(^o^)/

これから続きを観る。ちなみに邦題は「彼女が消えた浜辺」。ミステリーだ。踊っている場合か?

 

予定のない日はだいたいツタヤさんで借りてきた映画DVDを観る。今年に入ってもう12本も観てしまった。私の孤独を知るための指標となる。知りたくもないけれど。

いちいち数えていなかったけれど時間を持て余していたので、ついでに数えてみると去年は73本。せっかくなのでどれか一本誰かに勧めてみたいところだが、勧めさせてくれる他人も居ない。もしかして私孤独なのでは?孤独じゃん。考えれば考えるほど理不尽な腹立たしさが押し寄せてくるので、憂さ晴らしに一丁、最悪な映画を紹介しちまおうって魂胆さ。誰も得しないぞ。

 

1.神々のたそがれ

これさあどんな話って説明できないよ〜。ざっといえば賢者が殺され、愚者にのみ生きる権利を与えられる。そんな国民たちを神は目の当たりにしてなんかセンチメンタルになっちゃうの。サブカルっぽいものごとには目がない彼に連れられ長編約3時間、私はただ人々が意味不明のルールに従って生きたり泥まみれになったりなんとなく内臓をはみ出してみたりする映像を、しかもモノクロで観続けた。会話はあるが各々まったく繋がっていない。この終焉そのものみたいな世界でいったい何が始まるんだとだれながらも期待を寄せて観ていると、神らしき人が立ち上がって「神はつらいよ」と去っていった。ただそれだけの映画だった。終わった瞬間エッ!って叫んだ、隣で彼はすやすや眠っていた。こんなことなら神戸三宮ヒステリックジャムのリッチなクレープ頬張ってサブカルショッピングでもした方が有意義だよ。観ないこと。神戸三宮のヒステリックジャムには行け、行ってクレームブリュレを食べろ。これは使命だ。

 

2.ストレンジャー・ザン・パラダイス

 ジム・ジャームッシュ脚本だかロードムービーがどうだか知らんがとにかく暇なんだよなあ〜。陰気臭い男女三人の奇妙な共同生活が始まって、しかもこの三人っていうのがお互いそんな仲良くないんだよ〜。こんな合わない三人で遠くに出かけよってなって、うまくいくわけないんだよ。で、やっぱりうまくいかなかったねえって感じで話が終わっていくの。初めっから「だろうねえだろうねえ」の繰り返しで新鮮味もクソもあったもんじゃないよ。

 

中途半端だけどこの2つだけは観てはだめ。人生の大きな損失になる。

良い映画で語りたいな。でも睡眠薬が効いてきたからこのへんで。私はまたあのイラン映画と向き合って、ネオ現実を生きるの。ネオ現実ネオネオ現実。

現実はさびしいのだろうか。寂しいからうつらうつら揺れる私の浅い夢に干渉してくるのだろうか。

 

過去にもミクシィで似たような日記書いてたんだよね、そのときの日記が予想外に読まれる日記で。当然おかしな奴も粘着し始めるものだ。たびたび「それは僕達が性欲の奴隷だから」という謎めいたコメントをのこしていく人がいた。(日記の内容とは無関係なのでぶっちゃけ早く粘着やめてくれと思ってた)

何を言っても「性欲の奴隷であるせい」「性欲の奴隷だから仕方がないこと」の性欲の奴隷一点張り。ミクシィを離れた今性欲の奴隷の人が誰の日記の奴隷になっているのかなんて別にどうでもいいことだけれど、せめて、過去を恥じる程度に成長してくれているのであれば、実はちょっと会ってみたいって思う。生理的欲求の奴隷は、卒業できそうか?