009-009

エスゾピクロンの散歩

私以外私じゃないの?

私の代わりはいくらでも居るのに、私以外私じゃないという寂しさ。

 

009です\(^o^)/それは私だけが知っている。

 

クリスマスは例年通り「ついていけなさ」がすごくて、ただなんとなくうちに来たという恋人と、引き籠って過ごした。電飾とか、クリスマスツリーのギラギラした飾りとか、冬の寒さとか、単純に苦手だ。深夜0時頃、突然パーティーをやろうという話になって、近所のファミマにサイダーとチキン、ブッシュ・ド・ノエルを買いに行った。本当はショートケーキを買いに行くつもりだったのに。ショートケーキも並んでいたのに。それなのにブッシュ・ド・ノエルを買ってしまった。ブッシュ・ド・ノエルを買って切り分けもせず、付けてもらったプラスチックの白いフォークでザクザク刺して口に運んだ。ちょっと重くない?など文句をつけられながら薄い感謝のもとで消費される、かわいそうなブッシュ・ド・ノエル。美味しかったけれど。26日の朝、出勤前の私は「やっぱりショートケーキが食べたかった」と後悔していた。近所のコンビニを数件回っても、時既に遅し。ショートケーキの姿はもうなかった。

ショートケーキはおかしい。あんなに食べたいと願っていても、別のケーキの隣に並ぶと存在感が霞んでしまう。ショートケーキはおかしい。ショートケーキの隣にはいつも別のケーキが並んでいるからして、私は反射的にショートケーキではない方のケーキを選択してしまう。おそらくこれは生物として正しい反応なのであろうが、悔やまれる。ショートケーキが食べたい。今なら選べるだろうか、ブッシュ・ド・ノエルではなくショートケーキを。ショートケーキはおかしいので、かれこれ十数年は食べていない。

 

恋人はうちに泊まっていったけれど、クリスマス当日は夕方までぐでんと寝てしまっていた。彼が目覚めるまでとても寂しく、必要以上に寂しく、何をすればいいのかもわからず、とりあえず近所の公園まで歩いて、日向ぼっこをするおじいさんの背中をツマミにサイダーと甘いおやつを食べた。おじいさんの服装は茶系や濃紺、グレー系などシックな色合いで統一されていて見ごたえがある。またアーガイルチェックのベストを中に着込んだり、手編みっぽいマフラーを大切そうに巻いてフカフカしているのも趣深い。ちょっとオシャレなハンチング帽なんかかぶっちゃったりして、みんななかなかいけてる。おじいさんになったら、センスが洗練されていくのだろうか。感性が完成するっていうんですかな?

私がおじいさんウォッチングを楽しんでいる間に、うちで寝ている恋人のことを想像する。こうやって思い出がすれ違っていくんだよ。私たちは好き同士かもしれないけど、しょせん、私は私だよ。