009-009

エスゾピクロンの散歩

友達に会いたい

内臓破裂したとき、内出血の多さで極度の貧血状態になり、遊ばれたテレビのように、意識が点いては消え、点いては消えた。さっきまで受け答えしてたのに、消えて点いたら仰向けになって天井を見つめている。死ぬってこんな感じだったらいいのに。それはもう、あの日からずっと願ってる。夜に少し思い出して、あともう少しだったのにと悔やむ。

今月他県へ引っ越す。節約目的で、他人と同じ部屋に住む。これを機に仕事も変える。私達は問題なく仲良しである。それとは別に、私を生きるにあたる未練がどっと押し寄せてくる。私ごときが今更過去に戻って何をやりなおそうが、今以上の幸せを手に入れることは難しいだろう。自分のベストを尽くしてきた。自信がある。それなのに、心のどこかに穴が空いたようにすーすー風が通る。

友達と、一生友達でいられるだろうか。

新しい恋をするのだろうか。

ひらめいた時に動き出せる身体があるだろうか。日に日に身体が動かなくなっていく。

愛とか人を信じるとかよく分からないまま、なりゆきで人と暮らす。彼をたしかに好きだけれど、もしかしたらずっと一人でいるべきだったのかもしれない。

何もかもが変わっていくから不安で病院に通った時期があったな。あなたはピーターパン症候群。変化を恐れるなとアドバイスされたな。

この街の怠惰な暮らしにピリオドか。空を仰げば電線に包囲された街。

日当たりの悪い1K。泣き続けた二十代のすべてを、残して去るのか、私だけ。

引き返せる道がないとか、仕方がないとか、そんなんばっかりだったな。

今、将来がカーテンを開けて待っている。そんなとき私は後ろを振り返って、内臓が破裂したときのことを思い出してる。あのとき、あともう少しだったのに。そしたら今なんてなかったのにね。