009-009

ロングロングプロフィール

生き方

同居してる人は多趣味で多才で勉強家。家と職場と温泉の往復をしている私に「お前は何かを成したのか」と聞いた。私の平日は家と職場の往復で、休日は温泉施設をリサーチしては行って浸かってご当地グルメ舌鼓して返ってくるという、彼にとってはあじけないものである。

そんな空っぽでいいのかということを、遠回しに聞いてくる。言いたいことがあるのなら、はっきり言えばいいのに。

結論から言って私はこういう人間である。何も生産せず、達成せず、他者と和解せず、ただ一人、派手に着飾り黙々と暇をしている。外へ出て、行く宛もなく日の光や風を感じている。そして満足している。自分のことを気に入っている。植物のようだ。

やりたいことは?何者かになろうと思ったことは?この世に爪痕を残して死にたいとは思わないのか?それもよく意味の分からない質問。そんなあなたにアドバイス。お地蔵さんでも作ってどこぞの山奥に放置しなはれ。あなたは死んでもあなたの地蔵は未来永劫「なんだか畏れ多いもの」として後世へと受け継がれてゆくことでしょう。

要するに私は着飾って街をゆき、ビル風に煽られ頬を冷やされたい。空気の温度や流れを髪や手の甲に感じたい。ひとつひとつの産毛が揺れる。眩しくて目を瞑る。

要するに履いているのがマルジェラのパンツであろうが、そこに海があるのならふくらはぎまで巻き上げてざぶざぶ海へ足を突っ込んでいきたい。波が満ちて引く、今しかない波が満ちて引くのをつま先に、砂の中に感じていたい。

要するに露天風呂で私は合法的に服を脱ぎたい。全身に秋風を受け、暇つぶしに入る湯の中でだんだんと自他の境界線を失いたい。水のルーチンワークの中に違和感なく私が埋め込まれる。そのことを肌で呼吸で肉体で感じていたい。

セーターのチクチク、マウスを握る右手の手汗、クラシック音楽聞きながら眺める街の風景にある違和感。

今を生きるこの感覚よりも大切なことなんて他にない。私はこういう人間である。